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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)1225号 判決 1970年6月18日

控訴人(一二二五号事件反訴原告・

一一四八号事件附帯被控訴人)

清田義房

代理人

田中正司

外一名

被控訴人(一二二五号事件反訴被告・

一一四八号事件附帯控訴人)

野口光嘉

外三名

代理人

伊藤敬寿

主文

(昭和四二年(ネ)第九八八号事件につき)

原判決を次のとおり変更する。

原判決添付目録二記載の建物は控訴人と被控訴人野口光嘉の各二分の一の持分による共有であることを確認する。

控訴人の本訴請求ならびに被控訴人野口光嘉のその余の請求をすべて棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じて、これを三分し、その一を被控訴人野口光嘉の負担とし、その余を控訴人の負担とする。

(昭和四三年(ネ)第一二二五号事件につき)

控訴人の被控訴人野口光嘉に対する当審反訴請求を棄却する。

反訴費用は控訴人の負担とする。

(昭和四四年(ネ)第一一四八号事件につき)

被控訴人野口光嘉の附帯控訴を棄却する。

附帯控訴費用は被控訴人野口光嘉の負担とする。

事実《省略》

理由

一、昭和四二年(ネ)九八八号控訴事件について《省略》

二、昭和四三年(ネ)第一二二五号反訴請求事件について。

(一)  まず、被控訴人野口は控訴人の当審における反訴の提起には同意しないから、右反訴は実体審理に立ち入るまでもなく却下さるべき旨主張する。

しかしながら、既に明らかにしたとおり被控訴人野口は前記マーケット式貸店舗経営を事業目的とする組合契約の当事者であり、被控訴人金田、同古山、同角田はいずれも被控訴人野口より右店舗を賃借している者達である。他方本件訴訟は組合員の一人である控訴人が被控訴人金田ほか二名の店舗賃借人に対し使用賃借の終了を原因として建物所有権にもとづき各占有店舗の明渡の訴を提起したところ(前訴)、その賃貸人に当る被控訴人野口が控訴人に対し建物共有を理由に持分権確認ならびにその移転登記を求める訴(後訴)を提起し、両訴が併合審理されて被控訴人らの勝訴の結果控訴審に移審するにいたつたもので、原審において後訴では建物所有権の帰属をめぐる争だけで組合契約の主張はないが、前訴においては被控訴人金田ほか二名から防禦方法として控訴人、被控訴人野口間になされている組合契約の存在が主張され、控訴人がこれを認めることにより、組合契約の存在を前提として審理判断を経ていることが明らかである。右の如く両訴が請求の基礎を同じくし、攻撃、防禦方法に牽連関係を有する場合に両訴が併合のうえ、後訴で主張なき組合契約存在の事実も前訴で主張され、審理を経ている以上当審における控訴人の反訴提起により被控訴人野口に一審省略の不利益はないというべく、控訴審における第一審原告の新訴の提起(訴の変更)が自由であることと思い合わせ、本件反訴の提起は相手方の同意なくして許される場合にあたると解するのが相当である。《省略》

三、昭和四四年(ネ)第一一四八号附帯控訴事件について。

(一)  被控訴人野口は、まず、組合存続を前提として、本件土地使用権の二分の一の共有持分権の確認を求めているが、前叙の如く本件組合は控訴人の脱退によつて解散に立ち至つたものといわねばならないから右請求は既にその前提において失当である。なお、本件建物が控訴人および被控訴人野口によつて構成される組合の所有であり、したがつて、右両者の共有に属することはさきに述べたとおりである。もつとも、上述のように、控訴人は組合を脱退したけれども、二人によつて構成される組合は一人の脱退によつて解散するから、この場合の脱退は組合の解散請求と異ならず、組合財産の共有関係は脱退によつて変動を生じないと認むべきである。しかし、その敷地たる本件土地につき解散した組合に当然法律上の使用権があると解することはできない。組合が建物を所有するため組合員の一人が、その敷地の使用権を出資したとしても、それはただ土地を建物の敷地として利用させるというだけのことに過ぎず、その出資は当然に組合の存続を前提としてなされたものであつて、組合のために借地権その他の使用権を設定したものというを得ないから、組合が解散した後は、土地利用は地上建物の帰属決定をまつて当然にその所有者に回収さるべきものといわなければならない。もとより、上に述べたように、土地上に組合所有の建物がある限り、その建物を建物の現状において換価あるいはその帰属を決定すべく、その結果により、あるいは建物のため新たな借地権が設定され、あるいは建物が土地の所有者の手に帰して土地利用の回収が問題とならないことがあり得るけれども、それはおのずから別個の問題であつて、土地利用が組合の清算もしくは、残余財産分割の結果建物所有権の帰属が決するにしたがい、その所有者に回収さるべきものであることに変りはない。<以下省略>(長谷部茂吉 鈴木信次郎 麻上正信)

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